第7回 日本障害法学会研究大会プログラム  報告2:「公共交通アクセスへのアクセス保障」(15:45-16:10)                                  池 田 直 樹 第1 移動手段におけるバリアフリー(利便性享受から取り残された障がい者の権利獲得) 1,「第1の潮目(理念的潮目)」 ・「移動の権利」が、従来は「経済的権利(経済的自由)」と位置づけられていたが、「社会参加の権利(精神的自由)」に位置付けられるようになった。    ⇒JR西日本高架駅エレベーター設置要求訴訟(1999年3月11日大阪地裁判決) ⇒JR東日本(小海線)、トイレ車両不設置による損害賠償請求(2001年7月23日東京地裁判決、同2002年3月28日東京高裁判決) 2,「第2の潮目(法制度転換の潮目)」 ・障がい者は「保護の対象から権利の主体へ」という社会における位置づけが変化した。 ・背景には、ADAの成立(1990年)、国連の障がい者権利条約の制定(2006年)、批准国の確保で効力発生(2008年)。  ・日本政府も条約に参加し、批准した(2014年。これにより、権利条約の国内的効力が発生)。  ・障がい者差別解消法(2013年制定。差別「禁止法」ではなく、政府主導の「解消法」。合理的配慮義務が「努力義務」から「法的義務」へ〔段階的実施〕) 第2 障がい者の社会参加に対し社会、世論の支援が後押しした。 ・障がい者がバリアフリーの要求をしても社会から孤立することなく、社会が後押しした。保護の客体として「かわいそうだから守ってあげる」ではなく、「彼らは我々と同じ、社会に一員であるから同じように移動の利便性を享受すべき」 第3 企業のコンプライアンスとして、企業自ら、バリアフリーを推進するようになった。      ⇒京橋駅エレベーター設置訴訟、大阪地裁提訴(2016年)、JR西日本、エレベーター増設を決定。原告は裁判を取り下げた。2021年京橋駅のエレベーター増設完成。 第4 権利獲得のための主体的な取り組みとして「訴訟提起」を活用 ・原告として名乗りを上げる障がい当事者の存在 ・その原告予定者を支援する仲間の存在(仲間で訴状の原稿を書いてみる) ・その裁判を担当する理解ある弁護士の存在 ・その裁判を報道するマスコミの存在