育児放棄、子連れで飲み歩き… 妻にキレた自分責める 2009年7月13日 東京新聞朝刊  「なぜ、あの時だけ我慢できなかったのか。みんなでいい方向に行くように努力していたのに…」  昨年十二月十九日未明、堺市の商店街で幼い子ども三人を連れ泥酔していた女性が、迎えに来た夫に暴行され、命を失った。傷害致死罪で起訴された派遣社員の音揃一成被告(28)は、十三日午後に大阪地裁(中川博之裁判長)で開かれる初公判を前に拘置所から手紙を寄せ、家族の生活を台無しにした自分の行為を悔やむ言葉を連ねた。  妻千尋さん=当時(23)=の奔放さは、一成被告を悩ませた。掃除や料理はほとんどせず、夜泣きする赤ん坊にミルクをあげようとしない。最も困ったのは連絡なしに子連れで飲み歩くことだった。  同居する一成被告の母(54)から好かれ、「酒さえ飲まなければすてきな人」(一成被告)。子どもの成長を喜び、手をつないで一緒に歌う姿に「母親らしさ」も感じていた。周囲は「仲良し家族」と見ていた。  昨年七月、次男を妊娠中に泥酔して倒れた千尋さんは救急搬送先でアルコール依存症を疑われ、九月には更生相談所が軽度の知的障害と判定。療育手帳が交付され、ホームヘルパーに週二回家事を手伝ってもらうことになった。上の子ども二人も保育所に通い始め、状況は好転するように思えた。  だが十一月、育児を手伝ってくれた母が入院すると、負担は一成被告に集中。「仕事中も常に家のことが気になり、全く余裕がなくなった」という。事件の数日前、一成被告は心療内科でうつ状態と診断され、薬を処方されていた。  起訴状などによると、一成被告は、連れ帰る途中に立ち寄ったラーメン店のトイレで酔いつぶれた千尋さんを「何人に迷惑かけたら気が済むんや」と怒鳴り、殴打。腹を踏み付け、肝臓破裂による出血性ショックで死亡させた、とされる。店の長いすでは四歳の長女と二歳の長男、三カ月の次男が疲れて眠っていた。  「自分の中で何かが『ボーン』となってしまい、すべて振り出しに戻ってしまった」。一成被告は手紙で、自分を責める言葉を繰り返し「どうしたらよかったんでしょうか」と問い掛けた。